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「黄色い猫」突然のFIP宣告
我が家の初代猫はキジトラのオス。推定生後1ヶ月半の時、息子が河川敷で拾ってきました。
すくすく育ち2歳半を過ぎた頃、異変に気がつきました。
- 食欲不振(カリカリはほとんど食べない)
- 水をよく飲む、トイレの砂がすぐになくなる
- 痩せた(1歳の頃は5.4kg)
- 少し下痢をしていた
予兆はシルバーウィークの頃からありました。すぐにかかりつけに連れて行きました。
先生は「どこかに炎症があるので心配なら大きな病院を紹介します」と、1時間かかる病院を教えてくださいました。
その後、徐々に下痢も治まり食欲も少し戻り、3.4kgまで落ちた体重も4kgに戻りました。
体調の悪かった私はそのまま様子を見てしまったのです。
ところが依然として痩せて元気もなかったので、年が明けてから2月、4月とまたかかりつけに行き、尿検査をしましたがこれも異常無し。
しかしすぐに真っ黄色なおしっこをあちこちでするようになり、車で40分の大きな動物病院に猫を連れて行きました。4/10のことでした。
先生は一目見るなり「黄色いですね、いつからですか」と言いました。
黄色い? うちの猫は肉球も真っ黒、初めて言われた言葉でした。
先生は毛皮をめくり肌の色を見せました。確かに黄色い…そういえば耳も真っ黄色でした。
「黄色い猫は要注意なんです。黄疸が出ていますね」先生は黄色くなった白目を見て言いました。
それから2時間の検査の後、先生は険しい顔をして言いました。
黄疸が出ている、脾臓も腫れている
胸水が300ml溜まっていたので抜いたから呼吸は楽になったと思う。
胸水は詳しい検査をするがたぶん乳びだろう、リンパ管が破綻しているひどい貧血で、ショックで死ぬかもしれないので輸血はできない症状から見て、FIPだと思うが、遺伝子検査は高額なのでどうするか?
そして、先生は血液検査の結果を私の前に置きました。
ヘマトクリット値6…重い貧血の原因
CBC検査の結果は赤と青の異常値だらけでした。
- RBC(赤血球値) ➡︎ 0.83 (基準値6.54〜12.2)(100/μℓ)
- HTC(ヘマトクリット) ➡︎ 6.2 (基準値30.3〜52.3)(%)
- HGB(ヘモグロビン) ➡︎ 2.0 (基準値9.8〜16.2) (g/dℓ)
- MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、RDW(赤血球分布幅) 全て高値
- EOS(好酸球数)は0.07しかない
- PLT(血小板数)は112で、紫斑病、DIS、自己免疫疾患の可能性がある
生化学検査の結果は以下でした。
- ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ ) ➡︎ 248 (基準値12〜130)(U/L)
- GLOB(グロブリン) ➡︎ 5.6 (基準値2.8〜5.1)(g/dℓ)
- TBIL(総ビリルビン) ➡︎ 4.5 (基準値0.0〜0.9)(mg/dℓ)
- 肝臓の異常と免疫系の亢進、溶血があり感染症の疑いとのこと。
「それから、これが胸水です」先生はビーカーに入ったオレンジジュースのような液体を置きました。「黄色いのは黄疸のせいでしょう」乳び胸の原因はほとんどが不明だそうです。私は先生に遺伝子検査をお願いし、50000円近くを払って帰りました。
それからのことはほとんど覚えていません。その日にした処置、検査は以下の通りです。(大阪市・M動物病院の場合)
- 血液検査(血液一般検査と血液化学検査)
- Felv(猫白血病)、FIP(猫伝染性腹膜炎)検査
- 血清化学検査(電解質・単項目)(Na,K,Caなどと肝・腎・抗体の有無を調べるため?)
- 腹部エコー
- 胸部レントゲン
- 胸水穿刺除去
- コンベニア皮下注射 (2週間効く抗生物質)
- 抽出した胸水のFIPV,FECV-PCR検査
- (伝染性腹膜炎、コロナウイルスの一種である猫腸コロナウイルスの遺伝子検査)
余命は週単位だろうということでした。ところが1週間後に出た検査結果はFIP陰性でした。
- 胸水によるFIPの遺伝子検査の結果、FCOV(猫コロナウィルス)、バイオタイプ共に陰性
- Felv、猫エイズ共に陰性
- 胸水を詳しく調べた結果、感染症や癌細胞らしきものはなく血液成分もないがリンパが含まれる
- 腫瘍らしきものは見つからない
- すい炎検査も陰性
「FIPで命を落とす猫ちゃんの中からは外してあげてもいいと思います」
先生は優しく言ってくださいましたが、「原因不明の貧血・胸水」ということになってしまいました。
積極的な治療を行おうにも、原因もわからない。
対症療法になるしどのみち余命も短いのならこのままうちに連れて帰ってどうなろうと可愛がりまくろう。
家族でそう決めました。3歳の誕生日を迎えていました。
とても新鮮な鳥の生ギモを買ってきました。
美味しそうに鳥のモツをしゃくしゃく噛んで食べました。
相変わらずトイレマットやバスマットに粗相をし、チュールや煮干し、カマスゴをぱくぱく食べましたが2階には行かなくなっていました。
猫の貧血を見逃さない!7つのチェックポイントを押さえよう
猫の貧血は、早期に見つけるのが難しい症状です。猫の肉球の色の変化に気づかなかったり、赤い尿が出なかったりすることもあります。例えば、黄色いビリルビン尿が出ることがあるので注意が必要です。
猫の貧血を見逃さないために、以下のチェックポイントを確認しましょう。
- 耳、歯茎、肉球の色が白っぽくなる(黄疸が出ると黄色になる)
- 体温が低くなる、または熱が出る
- お腹だけがふくらんでいる
- 家の植物やネギ類を誤って食べる
- 外に出入りしている
- 赤い尿が出る
- 元気がなくなる、息切れする、食欲が減る
これらはすべて微妙な変化ですが、注意深く観察することが大切です。もし、誤食など明確な原因が分かっている場合は、すぐに対処しましょう。早期発見・早期治療が猫の健康を守るカギです。
FIP陰性 原因不明の重い貧血…その時飼い主はどうすべきか
我が家の猫は元野良子猫です。
飼い猫になってからは完全室内飼いで他の猫とのケンカもありません。
去勢もしていますし、穏やかな誰にでも懐く猫です。
初診時の検査結果を見ると尿素窒素(BUN)、クレアチニンともに正常で腎臓の異常はなし、グルコース(GLU)も正常で糖尿病でもなく、タンパク質(TP)も正常でした。
しかし「やはり貧血の治療だけはしてもらおう」と、私は再度M動物病院へ行きました。初診から12日後のことです。
以下は4/10→4/22、初診時との比較です。
- RBC(赤血球値) ➡︎ 0.83→0.91
- HTC(ヘマトクリット) ➡︎ 6.2→6.8
- HGB(ヘモグロビン) ➡︎ 2.0→2.3
- EOS(好酸球数) ➡︎ 0.07→0.08
- PLT(血小板数) ➡︎ 112→99
ほとんど変わらない上に血小板はまた下がっていました。
しかし先生は言いました。「数値が下がっていないことを喜びましょう。すごい生命力です。この数値で生きている猫ちゃんを私は見たことがないです。」
まずは疑わしい「ヘモバルトネラ」を検査することにしました。採血して作った標本の赤血球の表面に虫がいたら確定です。
4/22の処置、検査は以下です。23000円でした。
- 血液検査(CBC)
- 血清化学検査(肝スクリーン1)
- 薬代(錠剤7錠2種類、ステロイドと増血ホルモン)、調剤料、ペットチニック
- コンベニア皮下注射、ネスプ(造血ホルモン)注射
ところが、1週間後の検査結果では「虫は確認できなかった」とのことでした。
原因を探り続ける時間はありませんでした。貧血の治療はそのまま続けました。
重度の貧血が原因不明の猫の病気について
猫の貧血は進行が進むと元気がなくなるため、原因を特定しにくいことがあります。慢性腎臓病、糸球体腎炎、溶血性貧血、非再生性溶血性貧血、猫白血病や悪性リンパ腫などの腫瘍、糖尿病や甲状腺のホルモン異常などが考えられます。
腎臓病は多飲多尿、下痢、体重減少などの症状があり、エリスロポエチンというホルモンを注射で補うことが治療法ですが、人間用の薬であるため、猫には使えない場合があります。糸球体腎炎は体重減少や嘔吐、多飲が見られ、蛋白尿が出ることが特徴です。原因不明の場合が多く、直接的な病気がある場合はそれを治療します。
溶血性貧血は免疫介在性や腫瘍が原因の場合があり、ヘモバルトネラ以外の場合も同様の治療が行われます。黄疸が出ると危険で、網赤血球が増加します。非再生性溶血性貧血は骨髄で血液が造られない病気で、ステロイドや免疫抑制剤が使用されます。
猫白血病や悪性リンパ腫などの腫瘍は発熱や元気喪失、赤血球・白血球・血小板の減少が特徴です。糖尿病や甲状腺のホルモン異常は膵臓の異常や甲状腺機能亢進症などで貧血症状が出ることがあります。
免疫性の可能性が高いと考えられる場合、網赤血球数が急上昇します。これは成熟した赤血球が溶血で不足すると、若い赤血球が多く作られることを意味します。非再生性か再生性かを判断する際には網赤血球数が重要なポイントです。ある猫の診察で、造血ホルモンの投与により数値が改善された例があります。以下がその数値です(4/10→4/22→4/29):
- RBC(赤血球値) ➡︎ 0.83→0.91→1.09
- HTC(ヘマトクリット) ➡︎ 6.2→6.8→8.5
- HGB(ヘモグロビン) ➡︎ 2.0→2.3→2.8
- EOS(好酸球数) ➡︎ ほぼ変化なし 0.08
- PLT(血小板数) ➡︎ 102→99→102
- RETIC(網赤血球の数値) ➡︎ 7.1→12.9→36.3
薬の効果が現れ、「治るかもしれない」という希望が持てました。しかし、多飲多尿や粗相の原因は特定できませんでした。
猫の貧血の原因は多岐にわたるため、症状や血液検査の結果を元に消去法で原因を特定し、適切な治療を行うことが大切です。また、網赤血球数をチェックすることで、非再生性か再生性かを判断し、治療法を選択することができます。
呼吸困難、薬を飲まない…猫の自宅介護
粗相をするのはそれだけ体が辛いのだろうと、いつもいるお気に入りの窓辺の棚の下にペットシーツを敷いたカゴを置き、簡易トイレにしました。
食べられるものを食べさせようと、魚屋に行くのが日課でした。
マグロはあまり食べず、その時旬だったカマスゴをぱくぱくよく食べました。天気のいい日にはリードに繋いで日光浴。病状が進んでからは窓辺でじっとしていました。自力でトイレまで行き、ちゃんとおしっこをした時は家族みんなでべた褒めでした。
病院ではビブラマイシンという抗生剤とプレドニンというステロイド、そして液体の増血剤をもらいましたが、薬も嫌がりました。
錠剤は半分に割ってあり、とても小さい物でしたが、スープなどに混ぜてもすぐに吐き出します。頭をつかんで上を向かせるやり方も、嫌がって呼吸困難にしてしまいとても後悔しました。ネットでも空のカプセルが売られていますが、一番うまくいったのは、なまり節やカマスゴに埋め込んで食べさせる方法でした。
ペットチニックという液体の増血剤にはスポイドがついています。奥歯の横からチュッと入れて、また水をスポイドで流しました。どうしても薬を飲んでくれない時は、かかりつけで錠剤の代わりに注射をしてくれるとのことでした。
呼吸数は一分に多い時で60近く、口呼吸もありあまりにも辛そうなので2週間ほど酸素ケージを借りました。
これはとても良かったです。電話ですぐに駆けつけて設置してくれましたし、なにしろ酸素ボンベのようにすぐに酸素が尽きることがない。
ペットシーツと毛布を入れると中で寝てくれることもありました。慣れると自分から出たり入ったりして調整していました。
余命宣告からひと月と1日、ケージの中でがつがつパウチを食べました。
「酸素よりメシ!」と言ってるようでした。
その3時間後、病院に向かう車の中で娘に抱かれ、3年の命を終えました。
最後に
私がこの記事を書くに至ったのは、この体験が同じような方の役に立つかもしれないと思ったからです。
大きな病院でも貧血の原因を見つけられなかった猫ちゃんがこの世界のどこかにいるかもしれない…
私たちのこの1ヶ月は、とても濃く、重い毎日でした。
みんなで昼も夜も様子を見て出来ることはすべてやりました。
猫は最後まで全力で生きようとします。野生の力を見た気がしました。
今は、その少し後に現れた野良の子猫2匹と暮らしています。
もしかしたら先代猫が妹弟猫をプレゼントしてくれたのかもしれません。
この体験が少しでも役に立ったら幸いです。
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